診療科目別~開業ポイント<整形外科>

クリニック開業では、それぞれ診療科目ごとに特有のお悩みがあるものですが、整形外科を開業の場合、おそらく専門職の採用がポイントになるかと思います。
例えば、高齢者へのリハビリを中心に慢性疾患の「かかりつけ医」機能を充実させたい場合、専門職となる優秀なPT・STを確保されたいと考えるはずです。
他の診療科に比べて、多職種との連携・関係構築・人事労務管理が重要となりますので、マネジメント能力が求められるところです。
今回は、整形外科開業についてのポイントをお話ししていきます。
開業資金について
他診療科と比べて開業資金は多くなる傾向にあります。
前項でお話しした人材採用費用(ランコス含む)に加えて、設備投資も多く、開業地の面積も広くなることでテナント料or戸建て開業時の土地購入費・建築費が高くなる印象です。
| 土地や建物 | 3000万~ |
| 内装 | 4000万~ |
| 設備 | 3000万前後 |
テナント開業で1億前後、戸建て2億前後の開業資金が目安になるでしょう。
勿論、開業される地域・物件によっても変動しますので、市場相場をリサーチする必要があります。
また、自己資金がない場合でも、全額自己負担する訳ではないので、例えば、テナント開業であれば自己資金0円でも開業する資金調達方法はあります。
戸建て開業時の土地を借りるケース(定期借地権契約)では、初期投資(建築・設備)が増大するので、最低でも自己資金は2000万程度必要になることがあります。
一方で、整形外科の開業医の申告所得は、2000万円前後となるのが一般的で、概ね投資に見合った収益構造であることから、早々に集患数・収益の目標値に到達することが理想です。
開業時のコンセプト
開業時のコンセプト、リハビリの比重、ターゲット(患者層)によって事業計画の内容は異なります。
まずは事業計画の骨子を作成するにあたり、内容に応じた投資額で枠組みしますが、そこからコストを抑えたプランに加筆修正される等、AとBプランで比較されると良いでしょう。
リハビリを拡充される場合は、規模に応じた設備計画、施設基準に応じた収入計画、人員配置に応じた人員計画、それに向けた採用計画等。
高額医療機器(MRI)を導入される場合は、月間撮影数●●件の損益分岐点が重要となり、リハビリも含めて診療圏調査結果での外来想定患者数を把握する必要があり、これを元に撮影枚数を算出すると確度の高いシミュレーションとなります。
いずれのコンセプトで開業するにせよ、サンプルの概算シミュレーションではなく、外来診療収入、MRI撮影収入それぞれの損益分岐点を明確に把握された確度の高い試算をすることが重要ポイントになります。
人口動態のリサーチ
現在の日本では超高齢化社会となっておりますので、そもそも整形外科は最もニーズがある診療科の1つです。
「健康寿命を延ばす」ことが社会的テーマとなっていますので、リハビリ・運動機能の維持を目的にした整形外科は、患者の継続性が高く、特に65歳以上は慢性疾患を抱えている確率が高く、長期通院される患者が多いことから、安定した集患・診療報酬(リハビリ含む)が見込めるので収益性の高い診療科だと言えます。
(例)リハビリ主体に高齢者をターゲットした場合のポイント
・65歳以上の人口比率
・近隣に高齢者向け住宅or施設があるか
・通院インフラの選択肢
※学生や就業世代をターゲット(外傷処置・スポーツ整形)にされた場合、都市部を選択されるようであれば、開業地の流入人口(通学・通勤)がポイントになり、開業立地と診療内容のミスマッチがないようにしましょう。
敷地内のバリアフリー
バリアフリーはマスト条件ではありますが、特に整形外科では歩行に不安のある患者も多く、駐車場から院内までのアクセスの評価、院内の患者視点の動線設計は重要となります。
特にハード面の利便性は評価に直結するものと考えます。
ソフト面の対策については、ボリュームがあるので別の機会にブログにします。
人材への投資
人員採用・配置は、収益を大きく変動させるポイントになり、診療報酬を理解した人員採用・配置は重要です。
理学療法士による運動機器のリハビリテーション料を把握されてください。

理学療法士PT_リハビリテーション料 ※1単位(20分)
運動機器リハビリテーション料(Ⅰ)=185点
運動機器リハビリテーション料(Ⅱ)=170点
運動機器リハビリテーション料(Ⅲ)=85点
※放射線技師の採用については、開業時はドクターご自身が撮影できて、それ以外の対応は看護師に兼務いただける環境であれば、安定的に集患できてから採用を行う選択肢もございます。
設備投資について
スタートダッシュは大事ですが、必要以上の初期投資は医業経営の負担になります。まずは、シッカリと収益の見込める機器とそうでない機器をリスト化して、事業計画・資金計画の作成をオススメします。
例えば、最低限必要な設備は以下となります。
レントゲン、DRシステム、DICOM、PACS、電カル、この程度でしょうか。
例えば上記に加えて、「骨密度検査」は採算がとりやすい検査項目になりますので、高齢者ターゲットの場合は導入検討されてください。
(例)DEXA法_腰椎撮影360点+大腿骨撮影90点(大腿骨同時撮影加算)
また、以前にもブログでご紹介しましたが「程度の良い中古機器」を選定することで、コスト圧縮することも可能です。
医療保険と介護保険
患者が要介護度認定を受けていれば、多くの整形外科では「介護保険」による通所リハビリテーションとしてサービス提供します。
その中で「みなし通所リハ」とは、保健医療機関が、指定を受けたものとみなされる介護保険の通所リハビリテーションのことです。
医療保険では、リハビリ期間が150日までとされますが、要介護認定を受けている患者は介護保険「みなし通所リハ」となるので、より長期間のサービス提供が可能となります。
| 算定可能な単位数 | 期間 | |
| 医療保険 | 月に13単位 | 150日 |
| 介護保険(みなし通所リハ) | 利用者の要介護度とサービス提供時間によって異なります。 | 制限なし |
まとめ
整形外科の開業は、他診療科に比べて開業数は少なく、地方の一定の地域では競合のない場合もありますので、開業地の選択肢は多いと考えます。
また、他診療科と比べて専門職の採用も多く、スタッフ分業で開業医の負担を軽減しながら、収益確保にチームで取り組めることも利点の一つとなります。
高齢者主体にした開業プランであれば、医師会や他診療科だけでなく、地域のケアマネ、整骨院、スポーツクラブ等、連携先も豊富にあるので、効率的な集患対策とした活動をオススメします。
今回は、ポイント数点のみ抜粋しましたが、それ以外にもタスクは膨大にありますので、最低でも1~2年前から入念に準備されて、成功につなげていただきたいと思います。
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