クリニック開業の基礎知識② 資金・収支計画
クリニック開業の基礎知識①では、経営基本計画(基本構想)についてお話ししました。
経営基本計画(基本構想)で方針が決まりましたら、次は資金・収支計画です。
クリニック開業までに、土地、建物、物品等、どれだけ資金が必要で調達方法はどうするか?
今回は資金・収支計画について考えていきます。
資金・収支計画
資金・収支計画とは、お金にまつわるビジョンと予定を明確にすることです。
まずは3項目を大枠として、そこから派生しながら細分化して少しづつ深堀りしながら具体化していきます。
① 設備投資(建物や医療機器など)
② 資金調達(融資、自己資金など)
③ 収入と支出(収益と費用)
ポイント⇒ 開業後の収益と費用や、資金調達のみを重要視するのではなくキャッシュ・フローをしっかり理解して検討することです。
例えば、診療報酬が着金するまでには、2カ月間のタイムラグが生じますが、この期間は無収入に近い状況になる一方で、ローン、リース、家賃、人件費、医材消耗品費等の固定費がかかってきます。
損益ギャップを理解しながら、余裕を持った運転資金を用意する必要があるでしょう。
設備投資についても同じく余裕を持たせた計画が求められます。
また、保証金や手数料なども含めて、どのタイミングでいくらを支払うかを把握しながら進めなくてはなりません。
ご自身の自己資金においても、開業前後に大きな支出(お子さんの進学やご結婚等)がないか、社会情勢等の影響から建築費・商材の値上げ、様々な要因から予定外の支出となるリスクも考慮した計画が必要となります。
収入と支出については、開院予定地周辺の診療圏リサーチは必須となります。
厚労省が発表する人口動態調査がベースになっている市販ソフトもあるようです。
開業地を中心に半径設定するようなのですが、リアルタイムなアップデートはされていないのが難点です。
実際の診療圏は、生活動線、幹線道路との位置関係、なにより「地域特性」を考慮しなければ現実的な計画を立てるのは難しいでしょう。
この診療圏リーチを根拠として、収入を大まかに予測していきます。
支出=ランニングコストについても、人件費(看護師、その他スタッフ)、固定費(光熱費、金利、リース等)、変動費(医療材料、薬品、検査委託費)など多いもの順に並べるとまとめやすいと思います。
ポイント⇒ 余裕を持った資金計画を作成するには、"初期投資額の原価"を知らなければ作成できません。
先生が勤務医だったころ、病院の新設・改修、物品購入において、契約課、管理課が実施されていましたが、”購入されて運用開始された”までは把握されていても、経緯や内訳をご存じでない先生が大半だと思います。
単に安価設定するだけではなく、リースにするか自己資金とするか、どのように償却していくか等を計画していかなければなりません。
高額投資となるので、それぞれの金額等は専門家の意見を聞きながら市場相場を把握する必要があるでしょう。
まとめ
今回は事業計画書の大枠についてお話してきました。
事業計画書の作成は大変なことが多いですが、開業前の金融機関へに融資相談から、開業後の経営方針に影響しますので、クリニック開業と運営を成功させるためにも、ご自身でしっかり理解した計画の作成が必須となります。
また、開業準備中に、開業地の急な変化が生じて事業計画を変更せざるを得ない場合や、開業後に想定した集患がなかった、または集患が増えて診療範囲の拡充が必要となった等、様々な要因から事業計画の変更が余儀なくされる場合もあるでしょう。
その際にも開業立地の変更や設備スペックを下げる等、臨機応変にバランスをとった計画へ移行する必要があったりと、このようにイレギュラーな事案が発生した場合等も含めて、やはり専門家のサポートが必要な場面は多く、外部からの支援のあるほうが確実性が高いと考えます。
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