開業地選び 診療圏調査だけでは不十分な理由

診療圏調査とは、エリア人口×受療率で算出する見込み患者数を競合数で割った結果「見込み患者数は●●人」といった推定患者数を算出する市場調査です。
先日、開業検討のドクターとお打ち合わせの機会がありましたが、お考えの全ての根拠が「診療圏調査」のみでご判断をされていることに驚きました。
これまで何度かブログでコメントしているのですが、改めて診療圏調査以外の調査・分析についてお話ししていきます。
診療圏調査が全てではないということ
診療圏調査で評価が良い物件は必ずしも優良物件ではないです。
たしかに見込み患者数を算出する調査は最重要なのですが、この診療圏調査は大枠すぎるのが難点でして
個別状況や地域特性を無視した人口ベース主体にした単純計算となり、この情報だけで開業地を決めるのは早計であり、不十分であると私は考えます。
ただ、資金調達の際に銀行へ提出する書類としては、とても優秀な添付書類になりますが、資金調達が目的ではないので、言わずもがなですね(笑)
診療圏調査では算出できない情報
冒頭で否定的なコメントしましたが、エリアのポテンシャル、競合一覧、多数候補地を少数に選抜したり、これらを一瞬で算出する1次スクリーニングとして有用性の高いツールであることは間違いありません。
ただ、これらは人口データ主体に単純計算したデータになるので「診療圏調査では算出できない調査・情報」がキモとなるわけです。
例えば、
・競合の専門クリニックについてリサーチしたくても、週3日午前診察のみのクリニックも1カウントされるので再精査
・専門外クリニックも1カウントされたり、総合病院クラス(10~診等)も1カウントされるので再精査
・競合クリニックの集患率(盛業されているか、集患できていないか等)
・近い将来に競合クリニックの院長が高齢なので数年以内に閉院する等
診療圏調査では、競合クリニックの詳細情報が読み取れないのです。
また、住民の生活導線(地理的条件)も考慮されていません、法令や用途地域等の規制の確認、病院や福祉施設との連携についても当然に診療圏調査には含まれませんので、より実態に沿った調査とする必要があります。
たまにある話ですが、近隣の競合クリニック・他診療科が同級生または友人で構成されており頻繁に連携されていたら、そのエリアに入りこむ余地はあるのか、または、大盛業されている競合クリニックは患者が受診できなくあふれるケースもあり逆にチャンスだったりと
後々知りえて後悔しても後戻りはできないのです。
診療圏調査だけでは見えない「地域医療の状況・地域特性」はとても重要な判断材料となるはずです。
開業医自身のポテンシャル
診療圏調査、競合特性、地域導線等を確認されて、良い立地で開業して、ある程度の集患が見込めるとしましょう。
あとは先生の診療理念・サービスの質次第ではないでしょうか。
院長自身が親身に話を聞く、信頼できる専門医であるか、勤務する医療従事者の接遇・理念は浸透しているか、設備は整っているか、この情報化社会においては、あっという間に評価に晒されてしまします。
勿論、良い評価をいただくために日々努力するわけですが、自己評価ではなく、自院が地域に選ばれるかどうかの他者評価の視点がなければ、初診は取りこめても再診は難しくなるでしょうし、リピートなくしては医業経営は成り立ちません。
各種調査分析結果の良い立地と同様に「診療の質」「サービスの質」はとても重要となります。
ちなみに、私が受診する際に重要視しているのは、①診療の質、②サービスの質で決めています。
毎日通う訳ではないので、移動時間はあまり気にしません。
診療科によっては、診療圏調査エリア外からアクセスするケースもあったりします。
まとめ
開業地選びは、医業の長期的な展望と収益を決定する最も重要な経営判断となります。
診療圏調査は1次スクリーニングと捉え、競合分析、生活動線の確認、地域住民のライフスタイル、物件構造や賃貸借契約内容や収支シミュレーション(特に下振れ時の損益分岐点)も加えて、マーケティングした総合評価の高い開業地を選定しましょう。
初手で失敗しないためにも、ここには十分な時間と費用を惜しまず慎重に決定してください。
勿論これらはご自身でも調査分析できないことはないですが、開業地選定以外にも開業までのタスクは膨大にありますので非現実的です。
ご自身の分身として行動のできる開業コンサル・開業支援される税理士等のパートナーがいると安心ではないでしょうか。



