介護施設の経営課題

 

 超高齢化社会にある日本、介護サービス利用者が増加する一方で、施設運営での人材不足や経営難に苦しむ事業者は少なくありません。

では「上手く経営できている施設」と「経営難に苦しむ施設」その差とはなんでしょうか?

今回は、介護施設の経営で失敗しないためにも、介護施設の経営課題について考えていきます。

利益の確保

 施設形態にもよりますが特養や老健の経営では、国民健康保険連合会からの介護報酬で8割前後の収入となります。

一見すると、安定した固定収入もあり、異業種からすると恵まれた事業だともいえます。

 しかし、高騰する人件費に加えて、賃貸料や食材費、電気・水道などの光熱費、車両や介護機器のリース費用など、支出が多いビジネスであるため、利益の確保は簡単ではありません。

 また、事業開始当時と比べ、市場が縮小していたり、競合が増加していたり、政策の影響でサービス利用率が低減するなどの様々な外部要因から、需給状況の見通しを推計し、適正な事業規模へ再編する等の必要性も検討しなければならないこともあります。

入居者の要介護度

 介護保険制度では、人員配置基準を遵守する必要があります。人員配置基準は介護度との関連性がないため、要介護度が悪化するほど職員一人にかかる介護負担も大きくなります。職員の介護負担軽減から人員を増やすと人件費が上昇し、利益を確保していくことはますます難しくなるでしょう。

これら現状踏まえて、現行3:1から、厚労省は2024年介護人員について規制緩和する方向で検討しているようです。

 物理的に看護助手の配置や、ICTやIOTを活用して生産性を高めてリカバリーする方法もありますが、現場では経験の少ない職員も多く、入居者の心身状況によるイレギュラーでの対応は難しい、結局のところ過重労働(残業=人件費)となるケースが多い、といった声も少なくありません。

 目的が明確にあるシステムや機器も、施設特有の構造や運用ルールでは足枷となることもあるので、柔軟な対策が求められます。

介護職員の確保

 介護業界の有効求人倍率は、異業種と比較すると高い水準となるようです。

 慢性的な人手不足といわれる業種なので、処遇改善加算等もあり、収入面はそこそこ高い印象なのですが、人員の流動性が高く、また採用後の育成コストがかかります。

 ここまで、収入面は悪くないと言っているのは統計上の話で、地域によってはかなりバラつきがあり、とくに地方では低賃金での募集をされている法人もあるのです。

これはどの業種にも言えますが、給与が良いからといって、十分な人材を確保ができて、優秀な人材があつまるものではありません。

 介護職の離職理由の第1位は”人間関係”というアンケートデータもあり、若者の担い手も少なく「収入以外の施策」なくしては人材確保は難しいと考えます。

下記の別紙1は、厚労省発表の2023年、2025年、2040年の需要から介護職員の不足数を推計したものです。

※第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数(都道府県別)→数値は「現状推移シナリオによる介護職員数」から「必要数」を差し引いて閲覧してみてください。

出典:厚生労働省の発表資料「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」から別紙1の抜粋

まとめ

 利益の確保、入居者の要介護度、介護職員の確保についてお話してきましたが、多くの事業者も経営課題は理解していても、どこからどのように着手してよいかわからない、解決法方法がわからない、もしくは結果が出ないことで悩まれていることと思います。

 第三者機関に俯瞰的に施設の評価をいただき、ボトルネックはどこなのかを明確にするのも有効だと考えます。

木を見て森を見ずのように「実は改善するべきは〇〇だった」と気が付くこともあるかもしれません。

必ず成功する施設運営方法は残念ながらございません。

 成長産業と称される介護業界は、異業種からの参入、人材不足や競合他社との競争、新型コロナウィルスの影響で稼働率が低下した、離職者が相次ぎ経営がままならない、様々な諸問題が蓄積していきますが、これらを、ひとつひとつロジカルに解決していくことが重要なのです。

 知識不足、物理的な要因であれば専門家が解決できることは多いと思いますが、経営者や管理者自身が現状把握し、柔軟性のある戦略的運営ができれば、安定的な介護施設経営を目指すことは不可能ではありません。

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